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幸せな日に思うこと
たくさんの人におめでとうと言われて、つまみ食いしても姉ちゃんに文句を言われなくて、婆ちゃんが頭を撫でてくれる。そんな日。
休日だというのに、ナンバーズクラブの面々はわざわざプレゼントを届けに来てくれた。俺は幸せものだ、心からそう思える。父ちゃんと母ちゃんだってきっとどこか遠い場所で祝ってくれているはず。忘れちまってるかな、いや、そんなことはないだろう。
みんなからもらったプレゼントを開封しつつ、姉ちゃん手作りのケーキを頬張る。
あんまりがっつくと喉に詰まらすわよ、なんて言いつつ笑っている姉ちゃん、嬉しそうにずっと微笑んでる婆ちゃん。やっぱり、幸せだ。
鍵の中にいるアイツは何も今日一度も出てこないけれど、そもそも誕生日自体を知らない可能性があるから、まあしょうがない。
そんなことを思いながら、みんなにもらったたくさんのプレゼントを抱えて屋根裏に行くことにした。父ちゃんと母ちゃんに報告したい。自分にとてつもなく素敵なたくさんの仲間がいることを、教えたい。
そう思ってのことだったのだが、屋根裏に足をつけた瞬間アストラルが鍵から出てきた。
「なんだよ、ずっと寝てたのか?」
「………」
「アストラル?」

「君が産まれた日を心から祝福しよう。プレゼントを渡すことができなくて申し訳ないが…代わりに、私の気持ちを伝えよう」
「君が好きで、大切で、いつまでも一緒にいたい。それだけだ」

思わず手に持っていたプレゼントをバラバラと床に落としてしまい、拾うことすらできずにただ呆然と立ち尽くしていた。
唐突すぎる。今日の第一声が、まさかそんなものだとは想像もしていなかった。
月の光で一層綺麗に輝いているアストラルの琥珀色の瞳をじっと見つめ、遊馬は静かに息を吸った。
それから赤くなっている顔を隠すようにうつむき、ゆっくりと言葉を紡いでいった。

「俺、は…お前が、アストラルがそばにいれば、いいからさ。それだけで、充分だから。…だから、何も、いらねえよ」
「そうか。ありがとう、遊馬」

抱きあうように体を重ねて、見つめ合って、ふわりと笑いあう。
今までで一番幸せな誕生日かもしれない。これからもずっと、ずっとアストラルとこの日を過ごすことができたらいいのに。このときの感情を、匂いを、感触を、五感で感じているもの全てを、少しも色褪せることなく覚えておけたらいいのに。
「ありがとな、アストラル」
ありがとう、父ちゃん、母ちゃん。俺を産んでくれて、ありがとう。


あきゅろす。
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